なぜ転ぶ?高齢者の転倒に影響がある因子は?【システマティックレビュー】

今回は高齢者の転倒について述べていきたいと思います。

この記事は

  • 高齢者を対象に働いている方
  • 転倒リスクが高い人の特徴を知りたい

という方に読んでもらえればと思います。

私もこのような疑問があって、修士の研究で転倒予防をテーマとした研究を行っていました。

その中で多くの論文を読んで共通して言われていたことをまとめてみます。

この記事を読んでいただいて

  • 何故転倒が起きるのか
  • 転倒を予防するにはどうすればいいか

が分かって明日からのヒントになればうれしいです。


転倒の現状

実際日本の高齢化率と転倒はどうかかわっているのでしょう?

令和二年現在、日本で高齢化率は28.4%となり高齢化が進んでいる

転倒は介護となる原因の4位となっている

内閣府.R 元年度版高齢社会白書 . https://www8.cao.go.jp/kourei/white paper/w2019/html/zenbun/s1_1_1.html.

転倒によって起こる骨折は介護状態となるリスクになります。

実際、骨折をした後に介護保険の申請やサービスを受給される方は多いのではないでしょうか?

実際に転倒の頻度はこのように言われています。

特に65歳以上は転倒のリスクが最も高く、地域在住高齢者の推定3分の1が、少なくとも年に1回は転倒している

3人に1人というと多い印象ですが皆さんどうでしょうか?

それくらい転倒は身近なものなのです。

転倒の約10%は、骨折を引き起こすといわれており、50歳を越えると少なくとも女性では40%、男性では13%が骨折を経験している。

Perell KL. Fall risk assessment measures : an analytic review. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001, 56, p.761-766.


転倒の原因

転倒の要因は内的要因外的要因に分けられます。

  • 内的要因:高齢、過去の転倒歴、筋力低下、歩行能力低下、バランス低下、視力低下、関節炎、糖尿病、脳卒中、パーキンソン病、認知症、失禁など
  • 外的要因:照明の明るさや照明有無、階段・浴槽・玄関に手すりが無い、段差の高さ、滑りやすいまたは凹凸のある床面、コード類の有無、歩行補助具の使用、履き物の滑りやすさなど

転倒は、個人に由来する内的要因と、外的要因との相互作用,、また身体状況と外的環境との不適応などによる

Cameron ID, Dyer SM, Panagoda CE et al. Interventions for preventing falls in older people in care facilities and hospitals. Cochrane Library. 2018.

つまり転ぶリスクがある人が外的な要因によってとっさに転ぶということで、意識的に転びたくて転ぶ人はいないわけです。


転倒予測の評価

さて転倒リスクを予測するものとしてはどんなものがあるのでしょうか?

Deandrea S.のsystematic reviewではこのように述べています。

転倒を予測するための評価として医学的な質問項目や自己評価項目、動作の機能的評価が効果的である

Deandrea S. Risk factors for falls in community-dwelling older people: a systematic review and meta-analysis. Epidemiology. 2010, 21, p.658-680.

そしてこれらの項目では以下のものが具体的に挙げられています。

  • 質問項目:転倒歴、抗精神薬の使用、ADL支援が必要か、転倒の恐怖感、補助具の使用
  • 自己評価:Geriatric Depression Scale-15、Falls Efficacy Scale-International
  • 動作の機能的評価:Berg Balance Scale、Timed Up and Go Test、開眼片脚立位時間、5回立ち座りテスト、快適歩行速度


転倒予防のためには

転倒予防のために報告されたsystematic reviewによると,転倒予防に有用とされるのは,

  1. ­さまざまな要素を含んだグループエクササイズ
  2. ­さまざまな要素を含んだ自宅でのエクササイズ
  3. ­太極拳
  4. ­多要因への介入
  5. ­ビタミンDの摂取,
  6. 住宅改修,
  7. 眼の治療
  8. 遠近両用眼鏡の使用中止
  9. ­頸動脈洞過敏症の治療
  10. ­抗精神病薬の服用中止
  11. ­滑りにくい靴の使用

が挙げられています。

このように転倒予防には、決して運動機能面だけでなく眼機能や服薬調整、さらに環境要因に対してなどの様々な側面からのアプローチが有用とされています。


転倒予防のための論文をsystematic review中心にまとめてみました。

皆さんの役に立つ情報があれば幸いです。

具体的な方法などは今後機会があればまとめたいと思います。

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