交通事故後の頸椎捻挫(むちうち)期間によってどのような治療を行うか?


むちうちに対する文献や論文はあまり見かけないと思います。

それは、症状が多岐にわたり、損傷の程度も主観的な痛みや違和感が大きく影響するからです。

急性期〜回復期でどのような治療を行うかまとめたいと思います。





むちうちとは?

むち打ち損傷関連障害(whiplash-associated disorder)といわれています。

定義としては

「自動車衝突事故,あるいは飛びこみ事故や偶発事故において,後方あるいは側方からの衝撃により頸部にもたらされるエネルギー転移が加速-減速メカニズムで生じること」

Spitzer WO, Skovron ML, et al.: Scientific monograph of the Quebec Task Force on whiplash-associated disorders: redefining “whiplash” and its management. spine. 1995; 20: 8‒73

とされています。


特徴として、器質的損傷がなくても症状が出現することや、器質的損傷があっても症状と一致しない場合があります。

頸部外傷直後の急性期は頸椎カラーなどによる安静処方が一般的で、徒手的運動療法を実施する場面は少ないでしょう。

亜急性期から回復期にかけては鎮痛のための物理療法や自動運動、徒手療法などが適応とされます。




むちうちの特徴


一般的に、むちうち損傷による頸部痛者では

  • 屈筋群
    • 胸鎖乳突筋
    • 肩甲舌骨筋
    • 頸長筋
  • 伸筋群
    • 後頭下筋群
    • 頭板状筋

これらの筋が影響しているといわれ、タイプ I からタイプⅡb線維への形質転換が起こっており(速筋化)、頸部痛者は健常者と比較し低い負荷で筋疲労しやすいといわれています(易疲労化)。

これがいわゆる違和感に繋がっているのだと考えられます。




むちうち損傷の期間による治療


1.急性期 

急性期には積極的筋力増強は実施しないほうが機能的予後がよいとされています。

頸椎カラーを装着することにより、廃用予防としての軽い自動 ROM の指導は実施します。

後頸部痛、上部肩痛、肩甲骨内縁周囲部位に筋硬結を認める場合が多く、痛
みを助長しない触圧覚による疼痛抑制手技を用いると良いです。


2.亜急性期~回復期 

筋の血行改善を目的に、僧帽筋(上部線維)、大・小菱形筋、肩甲挙筋などのストレッチングから開始します。

また,安静や不動によって低下した頸部や肩甲帯周囲の筋力増強が必要不可欠です。

筋力練習は等尺性収縮によるものから行うと負担が少ないでしょう。

疼痛抑制は随時実施し、物理療法(電気や温熱)も用いるのも良いでしょう。




交通事故後の損傷は外力による影響から個人差が大きいですし、保険適応の問題もあるので期間とゴールの設定を早期から決めておくと治療を進めやすいかなと思います。

参考になれば嬉しいです。

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