今回は具体的に使える臨床での知識です。
糖尿病の合併症ごとの注意点をまとめてみます。
糖尿病の合併症は以下の通りです。
- 網膜症
- 腎症
- 神経傷害
これは三大合併症であり、皆さんもご存知のことかと思います。
この合併症ごとの注意点は意外と書かれていないなと思ったので、まとめます。
目次
合併症ごとの注意点
網膜症
〈注意〉
眼底出血、硝子体出血
〈原因〉
運動中の血圧上昇・血流増加に、網膜の血管が耐えられなくなって出血します。
〈運動の進め方〉
軽度の単純網膜症なら、運動を制限する必要はありません。
息を止めて力んだり(バルサルバ)、頭を下げたり強く振るような運動はよくありません。
増殖網膜症の場合は、積極的な運動療法はしません。
ただし、日常生活活動を制限する必要はありませんし、眼科の治療を受けて網膜症の進行が止まれば、運動療法を再開することができます。
網膜症がある場合の運動療法は、糖尿病の主治医と眼科医に十分相談して進めていきましょう。
なお、低血糖をきっかけに眼底出血が起きることもあるので、運動中・後の血糖管理に気をつけてください。
腎症
〈注意〉
腎症の悪化。脳や心臓の血管の障害。網膜症の進行。
〈原因〉
運動中の血圧上昇や血流の変化が、腎臓の血管に負担をかけ、腎症の進行が加速されます。
腎症の悪化により血圧はさらに上昇し、網膜症や心臓病の悪化、あるいは脳血管障害を起こす可能性が高くなります。
〈運動の進め方〉
微量アルブミン尿期で血糖コントロールがよい状態が続いていれば、通常の運動で問題ありません。
蛋白尿が間欠的にみられるようになると、運動によって尿中の蛋白が増えないことを検査で確認しながら運動強度を決めます。
蛋白尿が持続的にみられるようになると、血糖コントロールを目的とした運動療法は行いません。
ただこの場合も検査で腎臓やその他の臓器の機能を確かめながら慎重に運動療法を進めていくことで、血糖低下以外の運動効果を引き出すことができます。
神経障害
〈注意〉 足の壊疽〈えそ〉。不整脈・心不全などの危険。無自覚性低血糖。
〈原因〉
知覚が低下していることで、足の怪我に気付かず治療が遅れます。
また、自律神経の障害で、心臓の働きを適切にコントロールできず運動によって不整脈や心不全が起きたり、運動中・後に血糖値が低くなっても自覚症状が現れず急に低血糖の意識障害を起こしたりします。
〈運動の進め方〉
足の壊疽は、日頃の足の手入れを習慣的に行うことで予防できます。
常に足部に怪我や傷がないか確認しましょう。
自律神経障害が軽度の場合は、軽い運動なら構いませんが、中等度以上に進行している場合、慎重に進めていかなければいけません。
脈拍や血圧から運動の強度を推し量ることは危険です。
少しでもきついと思ったり違和感を感じるような運動は、中止してください。
また、無自覚性低血糖を起こさないため、運動中・後の血糖管理に気をつけましょう。
神経障害の影響が手足のしびれだけの場合は、運動療法を制限する必要はありませんが、運動が苦痛なようであれば、症状が回復してからにします。
以上、合併症ごとの注意点でした。
全身的に管理していく必要がありますし、検査値や日々のバイタルと照らし合わせながら進めていきたいですね。
参考になれば嬉しいです。
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