高齢者が低下しやすい筋肉は大腰筋

高齢者の生活自立や転倒・骨折予防のためには身体機能、特に筋機能の維持向上が重要です。

高齢になっても筋力トレーニングを実施することによって、筋機能を向上させることが可能であることがエビデンスとして証明されています。

しかし、高齢者は加齢によって筋力が低下するといわれています。

今回紹介する筋力とは、筋量である筋厚のことを指します。

先行研究で若年者と高齢者の筋厚を比較したものでは、

大腰筋が加齢による筋萎縮が著しいことが示されています。


若年者と高齢者の下肢筋の筋厚

先行研究では、超音波画像装置を用いて筋厚を測定しています。

若年者の筋厚平均値を 100% としたときの高齢者の筋厚若年比を求めた結果、下肢筋のなかで最も低い値を示したのは大腰筋(若年比 47.2%)であり、大腰筋は加齢による筋萎縮が著しいことが示唆されました。(表1)

表1 若年者と高齢者の下肢筋の筋厚

また、高齢者の歩行能力(速度)ごとで比較したもの(表2)では、

若年者の筋厚平均値に対する高齢者の筋厚低下率を求めると、歩行不可群におい
ては特に外側広筋大腿直筋中間広筋の筋厚低下率が78.2~83.0% と著しく高い値を示しました。

つまり、歩行が困難となり長期間歩行を実施していない高齢者では、下肢筋のなかでも特に抗重力筋の大腿四頭筋の廃用性筋萎縮が著しく進行していることが示唆されています。

表2 高齢者 3 群における下肢の筋厚低下率

高齢者の筋力トレーニングのためには

高齢者の日常生活動作能力の維持向上や介護予防を目的とした筋力トレーニングを処方するうえでは、特に動作能力や生活活動量と関連の深い筋や加齢による萎縮が著しい筋を中心に筋力トレーニングを実施することが重要です。

高齢者の介護予防のため、下肢筋では大腿四頭筋大腰筋の筋力トレーニングが重要であることがわかります。

これらを鍛えるためには、

スクワット

SLR

これらのトレーニングが有効であると思われます。


今回の研究ではあくまでも高齢者全体の傾向を示したものであるので、その方にあった評価や運動療法の提供が必要ではあります。

そのため一つの指標としてもらえればと思います。

参考になれば嬉しいです。


参考文献

Ikezoe T, Mori N, et al.: Age-related muscle atrophy in the lower extremities and daily physical activity in elderly women. Arch Gerontol Geriatr 2011; 53: 153―157.

Ikezoe T, Mori N, et al.: Atrophy of the lower limbs in elderly women: is it related to walking ability? Eur J Appl Physiol 2011; 111 (6): 989―995.

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