私が普段勤務している病院では、
整形外科の手術を多く行っています。
その中で、
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:以下TKA)
を行う方が多いです。
その中で
「手術後はどれくらい痛いの?」
「痛みは何日で良くなるの?」
こんな質問を受けることがよくあります。
そのため今回は、
TKA(UKA)手術後の痛みの期間はどれくらいでよくなるのか
についてまとめたいと思います。
- 実際にTKA(UKA)の手術をした方
- これから手術をする方
- TKA(UKA)術後に関わる方
に読んでもらえればと思います。
TKA術後の痛みについて
術後全身状態は手術による侵襲、麻酔、手術時間、出血量などに加え、年齢、既往歴などが影響します。
侵襲が大きいほど出血量が多いほど年齢が高いほど全身状態が悪くなり、術後の痛みにも影響します。
- 意識レベル
- 血圧
- 脈拍
- 体温
- 四肢冷感
- 皮膚湿潤
- 呼吸状態
- 酸素飽和度
- 水分バランス
- 血液データ
- 栄養状態
術後の全身状態は以上の項目1)をみる必要があります。
その中で術後の痛みの原因は
手術の侵襲による炎症
が一番です。
これは、軟部組織の治癒過程を理解しておく必要があります。
軟部組織の修復過程
術後 4日までは血餅形成される瘢痕組織形成期であり、組織は非常に脆弱な時期です。
この時期は創部を直接触れることは避け、組織の修復を優先させることが必要です。
術後 5 ~ 21 日はコラーゲン生成と分解が活発になり線維の増殖と収縮を認
める時期であり、積極的なリハビリ(可動域運動)に適します。
そのため、組織の修復の段階から考えると、術後5日以降には安静時の痛みが減少することが考えられます。
術後 21 ~ 60 日は線維化が起こり、瘢痕強度が増します。
この時期では安静時の痛みも落ち着いているため、痛みの訴えは少なくなりますが、膝関節を動かした時や動いた後に、組織が刺激されて痛みを伴います。
そのため術後の痛みは
- 術後 5日以降〜 安静時痛改善
- 術後60日以降〜 動作時痛改善
が目安と考えられます。
実際に私も普段、術後の方を対応しているとこの時期に当てはまるなということが分かります。
組織の修復を促すには、アイシングが有効です。
アイシングは
神経伝導速度を低下させることで、疼痛を軽減する目的に加え、血管浮腫、
血管透過性を低下させ、血清タンパクの血管外への滲出を抑え、腫脹・浮腫を軽減する目的3,4)があります。
方法は
10 ~ 15 分施行し、30 分以上間を空けることで効果があります。
術後のリハビリ後のアイシングも重要ですね。
現在、「大腿神経ブロック」を用いているので術後の痛みはかなり減っていますが、術後の期間について理解しておくことで、患者さんの安心にも繋がるでしょう。
参考になれば嬉しいです。
参考文献
1)杉本和隆 : 人工関節のリハビリテーション−術前・周術期・術後のガイドブック.三輪書店,pp148, 2015.
2)Robert C Manske: Fundamental Orthopaedic Management for the Physical Therapist Assistant. Elsevier, Missouri, pp138, 2016.
3)Meeusen R, Lievens P: The use of cryotherapy insports injuries. Sports Med 3(6): 398-414, 1986.
4) Ho SS, Coel MN, et al.: The effects of ice on blood flow and bone metabolism in knees. Am J Sports Med 22(4): 537-540, 1994.
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