左右非対称性とスポーツ傷害の関連について


ヒトの外見は左右対称的でありながら、利き手や利き脚のように身体の機能性に左右差が存在するのが一般的です。

皆さんも文字を書いたり料理をしたりするときに右利き、左利き と当然のように一側の上肢を使っていることでしょう。



非対称性とは?

利き手や利き脚は「ラテラリティー」と呼ばれており、一側優位性という言葉で表されています。


利き手の発達的な研究としてGesellら1)による研究報告では、利き手は成長に伴って段階的に変化し、8歳程度で利き手が完成するといわれています。

一側優位性には、利き手以外にも利き脚、利き耳、利き目の報告2)があります。


身体の一側優位性の存在により、スポーツにおいて、筋力や柔軟性、バランス能力等に非対称性が生じることが予測されますが、

これらの身体の機能的非対称性は、スポーツ選手の外傷・傷害発生と関連していると言われています。

以下にスポーツごとの報告をまとめます。


スポーツの外傷・傷害と非対称の関係


バスケットボール選手を対象とした研究では、四肢の非対称性が10%を超えるとスポーツ関連の傷害発生が増える3)と報告されています。

筋力に関しては,Knapik4)によると膝関節屈曲筋力または股関節伸展筋力に15%以上の非対称性が生じると、非対称性の程度が低い参加者よりも下肢の外傷を負う可能性が2.6倍高いことを示しています。


しかし、この非対称性は改善することができます

筋力の非対称性は経験年数によって改善することが報告されており、

Fousekis5)は、プロサッカー選手において経験年数が長くなるほど、下肢筋力の非対称性は小さくなり、膝関節屈曲・伸展の筋力比が高まるとの報告をしています。

この結果として、下肢の安定性が増し外傷・傷害発生率が低下するとまとめています。


これらの報告から、身体機能の非対称性は成長期に増大し、経験年数を重ねると改善してくるという経過をたどることが予測されるため、ある程度の成長による影響やトレーニング効果が非対称性の改善には必要なようです。


競技によりますが、スポーツの動作特性ではある程度の非対称性が生じることが考えられますが、

非対称性を有していると、外傷や傷害発生に影響するため、コンディショニングやトレーニングの面ではある程度対称的な機能を獲得していくことが予防に繋がりそうですね。


参考になれば嬉しいです。



参考文献

1) GESELL A, AMES L : The development of handedness. J Genet Psychol, 70(2) : 155-75, 1947.

2)石津 希代子:利きの発達と左右差.日本大学大学院総合社会情報研究科紀要 No.12, 157-161,2011.

3)仲立貴,韓一栄,大野誠:女子バスケットボール選手と水泳選手の部位別左右別身体組成.日本体育大学紀要(Bull. of Nippon Sport Sci. Univ.),38 (1): 1–8,2008.

4)  Knapik JJ, Bauman CL, Jones BH, et al.: Preseason strength and flexibility imbalances associated with athletic injuries in female collegiate athletes. Am J Sports Med, 19: 76–81, 1991.

5)Fousekis K, Tsepis E, Vagenas G:Lower limb strength in professional soccer players: profile, asymmetry, and training age. J Sports Sci Med. 9(3): 364-73, 2010.

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